- 経営系の大学・学部に入ったのはいいけれど、何から学んだらいいのかわからない。
- 経営学の授業を受けているけれどもイマイチ内容が入ってこない。
という大学生は多いのではないでしょうか。
私は大学の経営学部で教鞭を執っているのですが、大学で新入生を見ていると、授業で経営学を学んでも授業内容を直ぐ忘れてしまっている人やそもそも授業を受けながらぽかーんとしている人が多くいます。
その要因として考えられるのは、
- そもそも経営学を学ぶ目的が希薄
- 企業の主要な目的の一つである「利益」がなぜ生じるのかがわかっていない。
- 経営・ビジネスがどうなっているのかについてそもそもの実感がない
- 授業で扱っている教科書・参考書が難しい
などです。
そこで、経営学を直接学習するというところから視点を少し変えて、経営学を学ぶ前に、まずは経営・ビジネスとは何なのかを感覚をつかむことが重要だという観点からオススメできる図書を紹介したいと思います。
そのため、この記事では経営学の教科書・参考書ではなく、経営学とは何なのかを知るための読みやすい本を紹介しています。
教養としての投資(奥野一成著)
農林中金バリューインベストメンツでバフェット投資を実践して実績を上げる奥野一成さん著が日本企業や日本人の投資に対する問題意識にもとづいて執筆されている書籍です。
投資に関する本なので、直接的に経営学全般の学習に結びつくという訳ではありませんが、これからの大学生や社会人とって必須となりつつある投資や働き方に関する考え方、優良企業の見極め方などを歴史的な背景や実例を織り交ぜながら大変わかりやすく解説されています。
この本を読むことで、自分がどのように企業に関わっていくべきなのかがある程度見えてくると思うので、経営学を学ぶことの目的意識を培っていくのに役立ちます。
ちなみに、こちらの書籍は今ならAmazon Audibleの無料体験んで無料で読むことができます。通勤・通学中にオーディオブックで本を読む(聴く)ことは非常に効率的に知識を得ることができますので、是非これを機に無料体験を活用してみてはいかがでしょうか。
イシューから始めよ-知的生産の「シンプルな本質」
『イシューからはじめよ-知的生産の「シンプルな本質」』安宅和人著 英治出版
イシューからはじめると
やるべきことは
100分の1になる!
「ロジカルシンキング・問題解決の決定版」
「AI×データ時代の必携書」
脳科学×戦略コンサル×ヤフーのトリプルキャリアによる究極の問題設定&解決法。
コンサルタント、研究者、マーケター、プランナー…
生み出す変化で稼ぐ、プロフェッショナルのための思考術。
研究者やマッキンゼーのコンサルタント、Zホールディングスのシニアストラテジストというバリバリの経歴を誇る安宅和人さんのロジカル・シンキングに関する書籍。イシュー(問題・課題)・ドリブンで問題解決を図ることで生産性の高いアウトプットを生み出すことを説いている。それだけでなく、イシューの見極め方や問題を解決するための仮説・分析のやり方、さらには、その解決法を聞き手に分かりやすく伝える方法までを網羅した内容になっている。
単なるロジカル・シンキングの本ではなく、実際のビジネス現場における課題例を用いて具体的にそれを解決するまでの道筋が書かれていることから、経営学部の学生にはピッタリな内容となっている。
この方の本は文章が全体的に分かりやすく、かつ本質的で要点を押さえているため初学者でもスラスラ読めると思う。経営学部の学生だけでなく、現在・将来、知的生産に携わるすべての学生や社会人におすすめできる図書。
ちなみに、世の中や日本の状況をデータに基づいて的確に示し、それにもとづいてAI・データ時代において何をすべきかを書いている同著者の『シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成』もオススメ。
◎読者が選ぶビジネス書グランプリ2021 総合グランプリ受賞!!
◎ビジネス書大賞2020 特別賞(ソーシャルデザイン部門)受賞!!
◎ITエンジニア本大賞2021 ビジネス書部門 ベスト10!
◎累計17万5千部突破!
30万部超の名著『イシューからはじめよ』から9年――。
渾身の力で投げ込む、ファクトベースの現状分析と新たなる時代の展望!
ひたすら読むエコノミクス(伊藤秀史著)
経営学はもともと経済学から派生した学問なので、経済学の知識がある程度あると経営学がより頭に入ってきやすくなります。
たとえば、なぜ企業が利益を稼げるのかを考えてみましょう。
完全競争市場においては限界収益と限界費用が一致する均衡点まで製品・サービスの価格が低下するため、企業は基本的に利益を獲得することはできません。しかしながら、(そもそも現実には完全競争市場が存在しないという点を無視すれば)企業が何かしらの差別化を行い、顧客に付加価値を提供しているため、価格の均衡点がズレます。そのズレ、つまり限界収益と限界費用の差が企業の利益の源泉となります。
そのため、経営学、とくに競走戦略論において重要な概念である差別化や競争優位はこうした経済学のフレームワークにもとづくものであり、経済学をある程度知っておくと経営学の概念も理解しやすくなります。
しかしながら、上記のように経済学はややもすると抽象的なものであり、また数式が多用されたりするため取っつきにくい感覚をもっている人もいるでしょう。
この『ひたすら読むエコノミクス』は超一流の経営学者(経済学ヨリではありますが)が執筆した経済学の入門書であり、難しい数式等を使わずにわかりやすくまとめられており、経済学と経営学の橋渡しとなる書籍となっています。
V字回復の経営(三枝匡著)
事業再生専門家として長年活動し、ミスミグループの社長も務めた筆者が、いくつかの実話をもとにストーリーで企業再生の物語をまとめた書籍。小説形式で書かれているため、企業組織とはどんなものなのか?企業業績を良くするためには何が必要なのか?ということを迫真のストーリーを追うことで感じることができます。
大学の学問は実務では役に立たない見たいなことが言われてたりしますが、経営学において学ぶことができる現状分析や経営戦略の描き方が実務においてどのように適用されるのかを知ることができます。
ビジネス実務の感覚や企業で活躍できる人物像を感じることが出来るかと思います。同じ作者の同様の形式の著作として『戦略プロフェッショナル』や『経営パワーの危機』なども良書です。
小倉昌男 経営学(小倉昌男著)
次に、経営者の自伝を通じて企業・ビジネスの実態を学べる本を紹介します。著者の小倉昌男さんはヤマト運輸の元社長です。家庭から小荷物を送るには郵便小包みしかなかった時代に宅急便市場を切り開いたヤマト運輸は、小倉さんの指揮のもと、「宅急便」によって人々の生活の常識を変えました。
何からその変革の発想のヒントを得たのかなどが事細かに記されています。それだけではなく、タイトルに『経営学』とついているように、経営学的にそれらの発想や変革が整理されるのかも伝わってくる内容となっています。
実務と理論の橋渡しになるような書籍だと思います。
わかりやすいマーケティング戦略(沼上幹著)
最後に、教科書である『わかりやすいマーケティング戦略』を紹介します。
この書籍は、マーケティング戦略とタイトルにありますが、マーケティングだけでなく、経営学全般、とくに経営戦略論的な内容も含まれています。
また、初学者でも容易に学べるように、基本的な経営学の理論について、具体例や実際のケースと結びつけて執筆されているため、タイトルにもあるようにひたすら”わかりやすい”です。さらに、日本企業に欠けがちな企業活動に関する戦略的な考え方が自然に身につくようになっております。
堅苦しい経営学の教科書にわかりにくさを感じた人はこちらの書籍をオススメします。